日々の暮らしのこと-mico

いろんなことを感じます。そのまま文字にします。

読書感想文。

 

『夏物語』

 

ボロボロ泣いた。

 

小説でこんなに泣けるのか、自分、と呆れながら泣くほどに泣いた。

 

 

貧しかった幼少期。

無垢で楽しかった幼少期。

どこか不完全な家族。

ほとんど語られない他人のような父、そして失踪。

大好きな母、そして死。

優しく大きな存在の祖母、そして死。

変わってしまった生活。

姉妹。

わたしはあんたのお姉ちゃんやで。

強烈に記憶に残る街の景色・匂い・色。

小さな自分と信じられないくらい小さく感じる昔の家。

夏の情景と建物の対比。

胸が苦しくなるほど優しさを感じる登場人物。

過去と現在の対比、それによって救われる読者。

二百億キロ彼方を泳ぐボイジャー

時速三百キロで走る新幹線で、七千六百年かかる場所。

人が七六回生まれ変わらないと辿り着けない場所。

 

「つらいときはボイジャーのことを思いだせ」

「生きているといろいろ厄介なこともあるけれど、でもな、百年なんかあっという間だぞ、ひとりの人生だけじゃなくて、人間の歴史なんて宇宙にくらべたら瞬き一回にも満たないんだぞって。そんななかで泣いたり笑ったりしてるんだと思えば、元気でるだろうって。でもそれはいつか自分も死ぬんだとか、そういう意味じゃないぞ、自分どころか、太陽が燃え尽きて、地球と人類があとかたもなくなるときが必ず来るんだよ、でもボイジャーはもしかしたらそのあとも宇宙の果てを、ずっと飛びつづけるかもしれないんだぞって。」

「なあ潤、人っていうのは不思議なもんだな、ぜんぶなくなるのがわかってるのに、泣いたり笑ったり、怒ったりな、いろいろなもの作ったり、壊したりしてな。そう考えるとあっけないかもしれないけれどーーでもなぁ潤、そういうのもひっくるめて、生きているってことは、やっぱりすごいことなんだぞ」

 

文春文庫『夏物語』

著者:川上未映子

 

 

 

 

 

ここ数年、生きているということを何度となくいろんな角度から確認してきたけど、久しぶりに心の中に〝ストン〟と落ちた。

 

とてもガチガチに生きてきた私にとって、全身の力の全てが抜けるような言葉。

 

この本に出会えて、本当によかったと思います。

 

大事にしていきます。