ドリップコーヒー
最近、ドリップパックのコーヒーを淹れることが増えた。
スーパーやらドラッグストアやらどこでも売られている、1袋10パックとか入っているあれだ。
不織布の封を切ってほんの少しお湯を注ぐと、フワッと挽き立てのような香りが舞って、それをふか〜く吸い込むと、まるで全身の毒素が浄化されるみたいに、身も心も生まれ変わったような気持ちになれる。何度か深呼吸して、そんな心地をゆっくりと感じるのが大好き。
ドリップにお湯をそっと注いでいるとき、フィルターすれすれのところでコーヒーの粉が幸せそうに膨らんでくるのを見ていると、それが何やらあまーいカプチーノの泡に見えてくる。
そういう時、必ず思い出す一コマがある。
母は大のコーヒー好きだ。
わたしが小さい頃、家族分の食事を用意し終えた後の少し遅い朝食時に飲んでいた。
半分に切ってこんがり焼けたトーストと一緒に。
その時もよく即席のドリップパックを使っていた。
あるとき母のそばに立ってお湯を注ぐ様子を見ていると、そのこんもり膨らんだ泡を発見。
「甘くて美味しそうだな〜」と思った。
まだ、あまーくて優しーい味の飲み物しか知らなかった私は、口の中を甘ったるいイメージでいっぱいにさせながらそう母に言うと、「苦いんだよ」とおかしそうに笑って答えてくれたのを覚えているようないないような笑。
母がわたしの問いかけに答えてくれた数少ない会話の一つ。(というと、本当に会話してくれない母親みたいだけど、そうではなかったと信じています笑)
だから、いつもあのコーヒーの美味しそうな膨らみをみると、その時のことを思い出す。
ふと最近、あの時に感じた美味しそうだと思っていたものが実は苦くて全然魅力のない飲み物だと分かった落胆が、今、あの時の母と同じように、自分にとってのご褒美のような、自分をリフレッシュさせてくれる大事なものに変わったんだなぁと思うと、なんだかとてもくすぐったいような気持ちになった。
そして、母と同じようにコーヒー好きになった自分。
やはり親子なんだなぁと、妙に嬉しくなってしまうのでした。